阿原屋

あばらや

2020-01-01から1年間の記事一覧

『インド倶楽部の謎』有栖川有栖

◆感想 生まれてから死ぬまでのみならず、その人の前世までもが記述されているという『アガスティアの葉』。神戸にあるインド亭において、前世の記憶を共有するという親しい仲間が集まり、『アガスティアの葉』の私的なリーディングイベントが開催された。し…

『禁じられたジュリエット』古野まほろ

◆感想 現実の歴史とは異なる流れを辿っている別の『日本』が舞台である。戦時中にあるこの国は抑圧的な全体主義の政治体制が敷かれており、本格ミステリは退廃文学として禁書に指定されている。もしその禁書を閲覧し、その事実が警察の関知するところとなれ…

『馬鹿と嘘の弓』森博嗣

書店でぶらぶらと新刊を眺めていたら、森博嗣がまた新作小説を出しているではないですか。しかも講談社ノベルス。表紙の裏に書かれてあるあらすじを読んで、「なるほど『ゾラ・一撃・さようなら』みたいな設定はオーソドックスな私立探偵モノかな?」と思っ…

『本格王 2020』本格ミステリ作家クラブ 選・編

◆各感想 結城真一郎——『惨者面談』 ネタそのものは本格ミステリを読み慣れた人ならとても既視感のあるもの。家庭教師という題材でこれをやったというのが評価されたのだろう。 意外性を捻出するために、かなりの偶然が重なってしまっているため、ややご都合…

『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ

◆感想 資産家の老婦人が葬儀社を訪れ、自らの葬儀の手配を済ませたまさにその日のうちに、彼女が何者かに殺害されてしまうという事件が物語の起点となっている。天才肌だが偏屈な性格であり、今はロンドン警視庁の顧問をしている元刑事のホーソーン(探偵役…

『名探偵のはらわた』白井智之

◆感想 とある儀式によって、過去に凶悪犯罪を犯して日本中を震撼せしめた犯罪者が現世に蘇った。彼らは『人鬼』と呼ばれ、魂だけの存在ではあるが、生きている人間に憑いてその肉体を自由に操ることが可能である。『人鬼』は過去に自分が犯した殺人の手口を…

『詐欺師は天使の顔をして』斜線堂有紀

◆感想 霊能力者の子規冴昼はそのカリスマ性と神秘的な霊媒能力で一世を風靡していた。もちろん、テレビ番組などで彼が創出する奇跡はすべて演出で、そのお膳立てはマネージャーの呉塚要が担当していた。二人は唯一無二のパートナーとして、世間を相手に霊能…

『死亡通知書 暗黒者』周浩暉

◆感想 中国のとある省都のA市を舞台に、復讐の女神の名を冠す謎の連続殺人鬼「エウメニデス」と省都警察の熾烈な攻防を描く華文ミステリ。 2002年、一人のベテラン刑事が何者かに殺害された。事件が起きる前、この被害者の手元には「エウメニデス」による死…

アクタージュの原作担当が逮捕とか

週刊少年ジャンプで連載中の『アクタージュ act-age』の原作担当であるマツキタツヤさんが逮捕されてしまいました。 本当に大変な事態になりましたね……。 しかも逮捕された理由が強制わいせつ容疑とは驚きです。 初報を聞いた時点では、女子高生をホテルに連…

『エラリー・クイーンの新冒険【新訳版】』エラリー・クイーン

◆各感想 『神の灯』 傑作の呼び声も高い名中編。 荒野に建つ巨大な屋敷が一晩のうちに忽然と消失してしまうという大がかりなトリックを扱っており、インパクトのあるその屋敷消失ばかりが目立つけれど、実は他にも作中で用いられているトリックがある。その…

『犯人当てアンソロジー 気分は名探偵』

◆各感想 有栖川有栖——『ガラスの檻の殺人』 人気の少ない四つ辻で発生した殺人。東西南北それぞれの道の先は証人によって監視されており、通報があって警察が駆けつけるまでに通り抜けていった者はいない。 いわゆる広義の密室状況での犯行で、凶器の在り処…

開設

令和2年の8月になりました。 というわけでブログでも始めようと思います(えー 何がというわけでなのか全然わかりませんが、新しい月に替わってキリのいいタイミングなので、心機一転、新しいことでも始めようかなー、と唐突に思った次第です。 このSNS全盛…