阿原屋

あばらや

『死亡通知書 暗黒者』周浩暉

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◆感想

中国のとある省都のA市を舞台に、復讐の女神の名を冠す謎の連続殺人鬼「エウメニデス」と省都警察の熾烈な攻防を描く華文ミステリ。

2002年、一人のベテラン刑事が何者かに殺害された。事件が起きる前、この被害者の手元には「エウメニデス」による死亡通知書=殺人予告が届けられていた。

「エウメニデス」は死刑に処す対象をネット上の掲示板で市民から募集し、まるでゲームを楽しむように予告殺人を繰り返していく。

省都警察はこの連続予告殺人事件を担当する〈四一八〉専従班を結成し、さらなる犯行を食い止めるべく捜査に乗り出す。

主人公の羅飛(ルオ・フェイ)刑事はA市ではなく龍州市の所属だが、実は彼がまだ警察学校学生だった18年前——1984年にも発生していた「エウメニデス」の手による殺人事件の関係者だったため、〈四一八〉専従班に参加することとなった。

果たして〈四一八〉専従班は「エウメニデス」というシリアルキラーによる私刑を防ぐことができるのか……。

 

骨太な警察小説というよりは、漫画のような外連味のある展開が繰り広げられる作品。中国では圧倒的な人気を誇り、英米でも激賞されているらしいですが、個人的にはあまり楽しめなかったですね。

何が楽しくなかったって、最初から最後まで警察は犯人に翻弄されまくりなんですよ。ずっとやられっぱなしで、警察関係者の命さえ奪われているのに、本作の時点では一矢報いることさえできてない。情けねえ!

警察は始終、犯人の手のひらの上で踊らされたまま第一部は完となりました。

明確な敵役に対して、何一つ反撃さえできないまま物語が終わってしまったので、私としてはかなりストレスの残る読後感になりましたね。謎解きの意外性とかもそれほどでは……って感じ。

というか全三部作ってなんやねん。解説にしか書いてないやんけその情報。本作だけだと中途半端な終わり方でどうにも竜頭蛇尾というか羊頭狗肉というか。

 

また「エウメニデス」が殺した十数人の被害者達の中には、警察が過去に捜査して未解決だった強盗や強姦事件の容疑者も含まれているんですが、「エウメニデス」がどうやってそいつらを発見したのかがよくわからない。何で警察以上の捜査能力を持ってんの。

あと「エウメニデス」という存在は、18年前の警察学校時代に羅飛刑事の恋人だった孟芸(モン・ユン)が考えていた小説の構想だという事実が中盤くらいで主人公から語られるんですが、その事実を知っていたのは主人公と恋人と、そして主人公の親友のみ。

であれば、「エウメニデス」を名乗る殺人者あるいはその関係者足りえるのは上記の3人に限られるはずであり、そして主人公にはアリバイがあるため、残ったのは2人のうちどちらか……

そういうふうに連想するのは極めて当然だと思いますし、ゆえに「エウメニデス」の正体というのはかなり見え透いているのですが、切れ者と描写されている主人公がなかなかその結論に辿り着かないのがもどかしい。

読者であるこちらからしたら他にねえだろってくらい唯一無二の可能性だというのに。

時限爆弾を使った爆破事件なんかもありますけれど死体の身元を判別不能にして別人になりすますなんて定番中の定番だしねえ。もう少し捻りが欲しいですな。 

 

 良かった点としては、リーダビリティが高いところ。中国文化に精通していないと理解できないような部分というのはほとんどないため、そういう意味では安心して読めますね。

それから主人公が18年間抱えてきた恋人に対する苦悩が、過去の事件の真相が判明することで解消される描写はちょっと好みでしたね。本作で唯一救いがあったとすればあのシーンだけだったかな。

 

全三部作ということらしいので、本作だけですべてを評価するのは尚早かもしれません。しかし、続きが本当に出版されるかどうかもまだわからない。あまり日本で受けそうな印象はないのよね。

 

◆評価 ★★ 4点

 

アクタージュの原作担当が逮捕とか

週刊少年ジャンプで連載中の『アクタージュ act-age』の原作担当であるマツキタツヤさんが逮捕されてしまいました。

本当に大変な事態になりましたね……。

しかも逮捕された理由が強制わいせつ容疑とは驚きです。

初報を聞いた時点では、女子高生をホテルに連れ込んで買春行為にでも手を出したのかなと思ったんですが、まさかの強制わいせつ容疑。

路上を歩いていた女子中学生に自転車で後ろから接近しておっぱいを揉むというまさに言語道断な痴漢行為を働くとは……。

いや、これは本当に洒落になってないやつですね。

路上で女子中学生に襲いかかる漫画家とか前代未聞すぎる。

週刊連載のストレスで精神的に不安定になっていたんですかねー。

 

過去に週刊少年ジャンプの関係者では、『世紀末リーダー伝たけし』や『トリコ』の島袋光年さんが買春行為で逮捕されて起訴されたり、『るろうに剣心』や『武装錬金』の和月伸宏さん児童ポルノ所持で書類送検されたりといった事件がありました。

ただ、しまぶーの場合はいわゆる援助交際で、一応は被害者と合意だったんじゃないかなあと思うし、和月さんの場合は直接的な被害者は存在しないわけですから、世間からは比較的に許容されやすかったと思われますね。だから両者とも事件後も第一線の漫画家として活躍しているわけですし。

でもマツキタツヤさんの場合は一方的なわいせつ行為で被害者がいて、同意もなし。かなり悪質な犯罪行為だと認識されるので、社会的な非難もかなり大きそうですね。

 

素人の考えですけれど、『アクタージュ』の連載再開は難しいんじゃないかなあ。

仮に示談になって不起訴処分でも、今回の件で出版社や作画担当の宇佐崎しろさん女性だよね?)からの信用を失ってしまったわけですし。

そう、作品のファンである読者や、メディアミックス等の関係者にとっても残念な事態ですが、今回の件でもっとも可哀想なのって、やっぱり作画担当の宇佐崎さんですよねえ。

何も悪いことしてない、この件には無関係な立場なのに、いきなり連載終了ですからね。はなはだ同情を禁じ得ない。出版社の編集部は宇佐崎さんのことを労わってあげてほしいですね。

 

 

 

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それはそうと半沢直樹2期の第4話めっちゃ面白かったな!

 まさに大和田常務劇場!取締役会で半沢直樹の背後に寄り添う姿はジョジョのスタンドみたいでしたね。

あらゆる場面での言動に笑わされました。香川照之の演技凄すぎぃ!

半沢との協力関係も今回限りなのでしょうか。来週からの新展開も楽しみです。

 

『エラリー・クイーンの新冒険【新訳版】』エラリー・クイーン

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◆各感想

『神の灯』

傑作の呼び声も高い名中編。

荒野に建つ巨大な屋敷が一晩のうちに忽然と消失してしまうという大がかりなトリックを扱っており、インパクトのあるその屋敷消失ばかりが目立つけれど、実は他にも作中で用いられているトリックがある。その二つの組み合わせがシナジーを生み、神秘的な謎と論理的な解決を高水準なものに至らしめている(シナジーの使い方がこれで合ってるかは自信がない)。

この中編を好きな人は多そう。

 

『宝探しの冒険』

断崖の岩棚に三方を囲まれた屋敷の中で、真珠のネックレスが何者かに盗難された。犯人は屋敷にいる招待客の中にいると推定されるが、敷地内を綿密に捜索してもネックレスは見つからない。果たして犯人はネックレスをどこに隠したのか?

隠し場所は早々に目星が付くかもしれないけれど、犯人を炙り出すための宝探しゲームの存在が話をユニークなものにしている。

 

『がらんどう竜の冒険』

日本人の老紳士が暮らす屋敷で働く看護師が、何者かに頭を殴打されて気絶した。翌日、老紳士は屋敷から姿を消しており、現場からは竜の模様が彫刻されたドアストッパーがなくなっていた。そのドアストッパーは天井の滑石を用いて作られており、その中は空洞で五万ドルの現金が入っていたということだが……。

犯人の言動の中にある矛盾を見極め、実際に起きた出来事を推理するエラリーの手際が見所です。

 

『暗黒の家の冒険』

遊園地にあるアトラクション「暗黒の家」の中で殺人事件が発生。一切の光源が存在しない暗闇の空間で、被害者は背中に四発もの銃弾を受けて射殺されていた。被害者が死亡した際、同じく「暗黒の家」の中に入っていた客の中に犯人はいると思われるが……。

これは比較的犯人がわかりやすい話ですね。

事件そのものよりも、エラリーとジューナの微笑ましいデートの様子のほうが楽しい。男同士で仲良いですな。

 

『血をふく肖像画の冒険』

先祖の肖像画が血をふくという言い伝えのある屋敷に滞在することになったエラリー。ある夜、でたらめだと思われていた言い伝えをなぞられるかのように、肖像画には本物の血がついていた。

物語の背景がよくわからん!(えー

作中のエラリーも言うように、非論理的で人間的な話。

 

『人間が犬を噛む』

野球場で起きた毒死事件。死んだ男に対して毒を盛る手段と機会があったのは誰か。

喚いたり叫んだり、野球観戦に来てかつてないほどテンションの高いエラリーが見られます。試合の続きを観るために、急いで事件を解決しようと奮闘する様子はクスッと笑えますな。

 

『大穴』

競馬を題材にしたシナリオを依頼されたエラリーは、ポーラ・パリスからジョン・スコット老人を紹介された。スコットの牧場の競走馬であるデンジャーは、次に開催されるハンディキャップレースの有力候補だったが、出走直前、銃撃を受けてレースの棄権を余儀なくされる。銃を撃ったその人物が、スコット老人の娘との交際を禁じられたハンク・ホリデーだったのをエラリーとポーラは目撃したが……・

ちょっと無理のある計画のような気がする。トリックの切れも今一つか。

 

『正気に返る』

ボクシングの試合観戦に出かけたエラリーとポーラ。試合終了後、敗れた選手が殺害されて車の中で死体となっているのが発見された。たまたま隣に駐車してあったエラリーの車からは、車内に置いてあった外套が盗まれていた。殺人犯による盗難だと思われるが、何故そんなことをしたのか。

発想は同著者の某長編と似ていますね。外套を持ち去った理由さえわかれば、自ずと犯人は容疑者は絞られます。これも結構わかりやすい。

 

トロイの木馬

フットボールの試合が始まる直前に、宝石の盗難事件が起きる。すべてのありそうな隠し場所を探しても宝石は見つからない。犯人はどこに宝石を隠し、またどのようにして回収するつもりなのか。

トリックと呼べるほどのものは弄されてない小粒な一編。

しかし、その隠し場所はどうなんでしょう。音とかしませんかね。

 

◆総評

新訳版です。旧訳版で既読ですが、エラリー・クイーンは敬愛している作家なので購入しないわけにはいかないのです。

何と言っても特筆すべきは「神の灯」ですかね。推理小説の歴史を知るという意味でも、この中編を読むために本書を購入する価値はあると思います。本格ミステリとしての全体的なクオリティで言えば「エラリー・クイーンの冒険」のほうが高水準にまとまっているかな。

 

 ◆評価:★★★☆ 7点

 

『犯人当てアンソロジー 気分は名探偵』

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◆各感想

有栖川有栖——『ガラスの檻の殺人』

人気の少ない四つ辻で発生した殺人。東西南北それぞれの道の先は証人によって監視されており、通報があって警察が駆けつけるまでに通り抜けていった者はいない。

いわゆる広義の密室状況での犯行で、凶器の在り処が主眼となる短編。

犯行に使ったナイフを犯人がどこに持ち去ったか、それがわかれば自ずと犯人も特定できる。シンプルなワンアイデアで構成された話だが、こういうのも犯人当てに該当するんだなあ。

 

貫井徳郎——『蝶番の問題』

 山奥の別荘で発見された五人分の死体。その中には明らかに他殺されたと思わしきものも。刑事が持ち込んだ事件関係者の手記から、推理力に優れた作家が手記を読んで事件の謎を解き明かす。

貫井徳郎氏を読むのはこれが初めて。あまり本格の人という認識ではなかったけれど、こういう企画で声をかけられたりするのね。

肝心の内容だが、これも犯人当てに分類されるのか。意外性を出すために搦め手で攻めている短編。

ちょっと突っ込みどころがあるかなあ、という感じ。犯人当てとしては好みではないかな。

 

麻耶雄嵩——『二つの凶器』

大学の研究室で発生した殺人事件。犯行当時、現場ではフルフェイスヘルメット姿の男が目撃されていた。容疑者の誰かが正体を隠すためにそんな格好をしていたと思われるが、果たして誰の仕業か。

氏のシリーズキャラクターである木更津悠也が活躍する一編。

犯人の行動と容疑者の証言から見出せるわずかな違和感から、事件の構造を導き出せるかがポイント。

これは難易度高めでしょう。ヒントなしで真相を言い当てるのは困難。

 

霧舎巧——『十五分の出来事』

新幹線の洗面室で起きた傷害事件。被害者は後頭部を何かで殴られて昏倒していた。犯行が発生する前に被害者は何人かの乗客とトラブルを起こしていた。状況から考えて、犯人はその乗客の中に。そして凶器には何が用いられたのか。

これまた凶器が主眼となる短編。シンプルな犯人当て。

全体的にアマチュアっぽい雰囲気が漂う。文意がなかなか頭に入ってこなくて、事件の状況も把握しづらい。昔から氏の文体はどうにも肌に合わないなあ。

 

我孫子武丸——『漂流者』

本土から離れたとある孤島の海辺に流れ着いた男。彼は頭を怪我しており、近くを通りがかった人に救助されたが、記憶を失い自分が何者なのかも思い出せなかった。

自分の正体を知るための手がかりは、唯一の所持品だった日記のみ。その日記には凄惨な殺人を想起させる内容が書かれていた。犯人当てならぬ異色の人物当て。

明らかに不自然な描写が一つあり、それに気づけるかどうかが肝でしょう。

いや、しかし、こんな名前の男性いるかなあ。

 

法月綸太郎——『ヒュドラ第十の首』

関係を持っていたヒラド・ノブユキなる男に捨てられて傷つき、自殺してしまった妹。妹の墓前で謝罪させるため、兄の蟹江陸郎は上京するが、彼は何者かに殺されてしまう。

警察が蟹江の部屋を訪れると、そこはすでに殺人者によって荒らされたあとだった。PCは盗まれていたものの、オンラインストレージに保存されていたファイルから、三人のヒラド・ノブユキが容疑者として捜査線上に浮かんだ。蟹江を殺した犯人は誰か。

これぞ王道の犯人当て。それでいて意外性の創出にも成功している。

月氏の短編集『犯罪ホロスコープⅠ』で既読だったけれど、やはりこういう直球が好きですね。本アンソロジーの白眉。

 

◆総評

元は新聞連載用として書かれた短編をまとめた犯人当てアンソロジー。枚数制限もあって、依頼された作家側はなかなか苦労したことと思われるが、やはり麻耶氏と法月氏が正統派でいいですね。本格ミステリとしての強度に優れております。

 

◆評価:★★★ 6点

 

開設

令和2年の8月になりました。

というわけでブログでも始めようと思います(えー

何がというわけでなのか全然わかりませんが、新しい月に替わってキリのいいタイミングなので、心機一転、新しいことでも始めようかなー、と唐突に思った次第です。

 

このSNS全盛期に今さらブログを開設するとは、これまた時代に逆行している奴だなあと思われるかもしれませんが、何を隠そう、私自身も同じことを思っています(えー

 

このブログは日々の備忘録や雑記として活用していこうかなと考えています。

どうせこんなインターネットの場末で書かれた駄文を読んでいる人なんて皆無でしょうしね。

適当に書き散らかしていく予定です。

 

文章力ってのも、書き続けないと衰えていくものでしょうからね。

取るに足らない内容でもいいから、継続してアウトプットしていくコトが大事。

誤字脱字も気にしない!構成も適当でヨシ!(えー

 

Twitterをやっていた時期はあるんですけれど、どうにもアレは私向きじゃないといいますか、あんまり長続きしないで、結局は他人のツイートを眺めるだけになって、自分ではめっきり呟かなくなってしまったのです。

一回の投稿が140字制限なのも窮屈に感じるし、広告も多くて邪魔だし、同じツイートが何回も流れてきたりするし……。

こうやってフォントサイズを大きくしたり色を変えたりもできませんしね(えー

何より情報量が多すぎて、自分が本当に欲しい情報を探すのが面倒なんですよね。

 

「今」の出来事に対してリアルタイムに反応があるところや、著名人とも簡単にやり取りできるって面に関してはTwitterの利点だと思いますので、全否定するつもりはなくて、ただ単に自堕落で怠け者の私には不向きだなあって話なのでした。

 

現実でも人混みは嫌なんですが、つまりはネット上でも混雑している場所にはいたくないって感じですね。

風通しのいい環境が好みです。

 

毎日更新はどうせ無理でしょうけれど、とりあえず三日坊主にならない程度には努力します。

最低でも週に1回とか?

あまり目標は高く設定しないほうがいいですよね。

とにかく今日からやっていこう。